おばさんのこと

おばさんの手首に傷があった。おばさんはあかるい人だ。おばさんは人が好きそうな態度を取る。おばさんは結婚している。おばさんの結婚相手はおばさんのことを愛している。おばさんは結婚相手のことを信頼している。おばさんは自分で結婚相手を選んでいる。おばさんは子供と暮らしている。おばさんは大勢のひとに慕われている。おばさんはたくさんのこどもを見ている。おばさんの手首の傷は数えきれない。おばさんは歩く。おばさんの顔はよく困っている。おばさんは変化する。おばさんの手首はたゆんでいる。おばさんは泣くことを恥ずかしいことだと思っている。おばさんはよく泣く。おばさんの運動能力は少し低い。おばさんの内臓脂肪は平均より多い。おばさんは10年以上前にひとり出産した。おばさんの子供は女の子。おばさんは引っ越した。おばさんの手首に傷があった。おばさんがおばさんになったときおばさんの本質は自己犠牲になった。次に破滅願望があった。おばさんはおばさんの自己と生きている。おばさんの理性は働く。おばさんの理性はおばさんを毎朝起こす。おばさんの理性はおばさんを毎朝着替えさせる。おばさんの理性はおばさんの結婚相手との性行為を受け入れるようおばさんに言い聞かせた。おばさんには自由がある。おばさんの自由とはつまりおばさんの思考の自由である。おばさんには肉体がある。肉体は不自由である。おばさんは時々誰よりも幸せだと感じる。その時おばさんはこの世でもっとも不自由になる。おばさんは物忘れが多い。おばさんは自分のものをよく置き忘れてしまう。おばさんは自分のために泣くことはない。おばさんは自己犠牲を美しいものと感じない。おばさんの手首には傷がある。おばさんにとって自己犠牲はナルシズムの具現である。おばさんは社会に認められる仕事をする。おばさんはたくさんのひとに感謝される。おばさんの手首には傷があった。おばさんはおにぎりが好きだ。コンビニの海苔がパリパリなおにぎりが好きだ。梅味のおにぎりが好きだ。おばさんはパリパリの海苔を上手にご飯に巻くことができない。おばさんがおにぎりを開けると海苔はバラバラに割れる。おばさんの手首には傷がある。おばさんの手首にある傷は隠されている。おばさんはガラケーの通信料がいくら上がってもスマートフォンに乗り換えるのを渋る。おばさんは数円でも安いものを求めてスーパーをはしごする。おばさんは求めている。